陽の光、緑の匂い、水の音
ひょんなことで帰省していたのですが、
母の実家の墓掃除に誘われたのでついていくことに。
同行者は母と叔母、今は福岡にいる祖父です。
母方の実家は山口の山奥にあり、実家のある福岡からは
高速道路を使っても車で片道3時間ほどかかります。
しかも予定が一日しか取れなかったとかで、日帰りで往復するという強行軍。
必然的にコミケばりの早起きをしなければなりませんでした。
24時間営業のお店で軽く準備を整えいざ出発です。
二時間ほどかけて、ようやく山口に到着しました。
所謂市街地と呼ばれるような場所から
更にダムとなる予定の山間を1時間ほどかけて越えていくと目的地です。
朝方のさわやかな空気がぼやけた頭に気持ち良くしみ渡ります。
道の駅の朝市で母と同行した叔母がお墓に供えるお花を調達しました。
人工的な音のない町の外れは、残された親族を
見守る土地としてはうってつけなのかもしれません。
お墓の掃除を終えると、祖父らはお知り合いの方のところへ挨拶に行くようでした。
その間、せっかくなので自分は近所を散策することにしました。
夏休みだからでしょうか、小学校もしんと静まり返っています。
こんな田舎では全校生徒で20~30人程度しかいないとか何とか。
近くを流れる川まで歩いてきたときはかろうじて
遊びに来たと思われる家族連れを確認できました。
川には鯉などの魚が棲んでいるようです。
川べりまで歩いてそこでエサを撒いていると、
次第にたくさんの鯉が集まってきました。
物欲しそうにこちらを見てくる鳩にエサをやってみると、
それぞれ番と思わしき2対4羽の鳩が集まってきました。
田舎の鳩は心なしか痩せています。
もうお昼近くだというのに、
この町には喧騒らしい喧騒が感じられませんでした。
あるのは、風の音、水の音、緑の音ばかりです。
福岡の喧噪のなかで育った父とは対照的に、
母は文字通り水の流れる音や風の音を聞いて育ったそうです。
私も中学生くらいまでは長期休みの度に祖父宅に遊びに来ていたものですが
まとまった帰省をすることすら殆どなくなった今では
タイミングが合わなければ、山口に来ることすらなくなってしまいました。
しかし、こうやって訪れてみると私の幼少時代が確かにここにもあることを感じます。
川遊びをしたことや、近くの土手でカニを捕まえたこと、
神社で従兄弟らと遊んだこと、坂の下の駄菓子屋で粉ジュースを買ったこと。
きっとそんな経験が今の私の信念や理想の一部となり、
いつまでも私を支えていくに違いありません。