なれる!SE3 -失敗しない?提案活動-

2011-01-18   treby   ラノベ  , , , このエントリーをはてなブックマークに追加

自分用、布教用、保存用

自分の中で期待大のIT企業系ラノベ第3弾!新キャラとして橋本と梅林(共に地下鉄七隈線駅名にも)が登場して福岡市地下鉄元ネタ説を推す自分としては嬉しかったりなんだり。

また途中明かされる梢さんヤンデレ設定には不覚にも性的興奮を覚えました。梢様とりあえず踏んでください、的な。お約束ですが。なEが好きで、夜も眠れない……ことはないですが、突発的にツナ缶食べたり、わっちにヨイツのツナ缶頼んだり、ツナという単語に過剰反応してしまったりと現在個人的に熱いコンテンツであることは前のエントリで述べた通りです。

(以下、酷評です)

だからこそ率直に、3巻の内容は期待外れと言わざるを得ません。そして恐らくこの読後の僅かな不愉快は万人が受けるものではなく、私のなEに対する「身勝手な」期待から来ているのだと思います。

今回も文章は読みやすいです。後半多少駆け足の感もありますが起承転結がしっかりしていますし、それでいてギャグパートを交えられる柔軟さは自分自身も技術として取り入れられればいいなと思っているくらいです。

意味わからないくらい(褒め言葉)専門用語が出てくるのも私の知識欲を刺激しました。サブタイトルからも見えるように今回は上流工程に集中していましたね。

……という風に部分部分を語れば悪い部分が見当たらないんですよ。それなのに読了後に私の心にはわだかまりが残っているんです。先を急ぐあまり大事な部分を読み飛ばしているのではないか、と初めは私の読解力を疑いました。しかし今日までに二度読み直しましたが、読後の印象というのは変わりなく。好きな作品なのに不愉快に思えてしまうのは何故だろうと考えましたところ1巻や2巻と話の展開に変わりがない、という憶測にたどり着きました。

3巻まで読んでみて、なEは読後爽快感を提供する作品であることが分かります。途中にいろいろと苦労するんだけど最後には報われてハッピーエンド、という流れは皆不幸で鬱になってしまうよりかは余程好きなのですが、それも毎回同じような展開でされると食傷気味になります。

つまり無礼を承知の上で評するなら、
「用意された話の枠組みに、巻ごとに違う専門分野を当てはめた」
感じを受けました。

また、内容のリアリティさにも疑問を抱きました。すなわち工兵の立ち直り方の描写が雑、というか巻を重ねるごとにそんなのありえねーという感じになってきているということです。ラノベですから、ある程度のご都合主義やキャラ能力補正はあって当然だとは承知しています。だから立華や梢はあれで構わんと思います。

私がここで主張したいのは、3巻の展開は、それにしても度を越しているというか、義務的に作品の必須要素として「挫折」を取り入れてる印象を受けるということです。そりゃあ挫折して潰れちゃ元も子もないですから、いつかは何とかせないかんですたい。でも、毎度毎度見計らったように救いの手が差し伸べられるというのは面白くないです。どうしようもないことって大抵最後までどうしようもないですし、それで辛酸なめるような経験って一度や二度じゃないと思うんですよ。

まして今回のテーマはテクニカルというより営業方面の話です。SE方面にすらひよっこの工兵の手に負えるはずがありません。Amazonの2巻レビューに「工兵が上条さん化している」というものを見かけましたが、私が3巻を読んで受けたのは、まさにそんな感じです。たかが1週間そこら苦心したところで上手くいかせちゃうその顛末には「リア充爆発しろ」にも似た感情を抱きました。あるいはもう少し挫折の描写が丁寧にされていれば心象も変わっていたのかもしれません。

その辺の雌伏した話は、実際には主要キャラクタ(立華、橋本課長)の昔話として出てくるんですが、主人公=読者目線じゃないからてんで重みが出てこないんですね。つまり感情移入までいけない。そこが、わだかまりの一因じゃないかなーと感じる次第です。

余談ですが、逆に1巻の工兵の就活描写は「生きている」気がしました。初めは真摯に取り組んでいなかったこと、無謀にも大手しかエントリーしていなかったこと。全く私と同じです。お祈りされる度、自分の人間性が否定されているようだ、という表現には読み進めながら内情まで見透かされている気がしました。私は大学院という選択をしましたが、世の就活生の多くが感じるであろう不安を上手く描けていたと思います。

あとは作中で悪く書かれている架空の企業、JT&WからAT&TやNTT docomo など、実在の企業を連想してしまったのも良くなかったですね。知り合いに複数それら「大企業」で働かれる方を持つ自分としては、JT&Wが明らかな悪として描かれているのが不愉快でたまりませんでした。

より具体的に挙げるとリアリティの話に被る部分もあるのですが、どう考えても大企業にカテゴライズされる会社に勤める人間がああいう行動に出るとは思えないのです。だからこそ公共の場では身分を伏せ仕事の話をしないように真っ先に教育されますし(インターン生に対してすら教育します)、仕事上の根回しをするにしても、もっと狡猾にやると思います。稀にある例外として猩々がいたとしても、複数人のグループでありながら抑制する立場の人間(梅林)が止めないのは、ありえないと思います。

本職SEの方から見れば学生ごときがSEネタに対してリアリティを語るなど笑止、と言われそうでビクビクですが、一応SEの卵をやらせていただいている一人としての私見を述べさせていただきました。

作者様の筆が速いのはファンとして非常にありがたいのですが、その所為で内容がつまらなくなってしまうのなら、ただただ残念に感じます。